プルームテクトニクスと大陸移動:地球の地殻変動の鍵

プルームテクトニクスは、地球科学の分野で非常に興味深い現象であり、私たちの惑星の地殻や地球表面の形成に深く関与している。

プルームテクトニクスは、山脈や火山、地震、地熱活動などの現象の原因の一つであり、大陸移動にも影響を与え、地球の地図を変化させる。

プルームテクトニクスは、地球の内部にあるマントルの対流によって、地表のプレートが動くという学説である。

プレートテクトニクス理論では、プレートが自らの重みで沈み込むことで動くと考えられているが、プルームテクトニクスでは、マントルの対流がプレート運動の原動力となると考えられている。

マントルの対流は、地震波トモグラフィーによって確認されている。

トモグラフィーの結果、マントル内部には、上昇流とみられる高温領域と、下降流とみられる低温領域が確認されている。これらの筒状の上下の流れが、マントルの対流に相当する。

マントルプルーム

プルームとは、地球の内部で上昇・下降する熱い柱状の流れである。

マントルは、地球の中心から地表まで広がる層であり、その深さは約2,900kmである。プルームは、マントルの深部から上昇するホットプルームと、地表で冷えて沈み込むコールドプルームの2種類がある。

プルームの上昇・下降は、通常は深さ670km付近で止まる。これは、この部分がマントルの上下で性質が異なるためである。

670km付近を超えて大きく上昇・下降するプルームをスーパープルームと呼ぶ。スーパープルームは、地球の内部構造や地殻変動に大きな影響を与えていると考えられているが、その詳細はまだよく分かっていない。

コールドプルーム

コールドプルームとは、周囲のマントルより温度が低く、マントル表層から中心部へ向かって下降するプルームである。コールドプルームは、プレートテクトニクスと深く関係している。

大陸プレートと衝突した海洋プレートは、海溝からマントル中に沈み込む。沈み込んだプレートは、周辺のマントルと一体化し、徐々に冷却される。冷却されたプレートは、外部マントルと内部マントルの境目の深さ670kmの部分でいったん滞留し、その後、さらに内部マントルの底を目指して沈んでいく。

複数の下降流が寄り集まると、強く大きな下降流が発生する。これをスーパーコールドプルームと呼ぶ。スーパーコールドプルームは、周辺のプレートを吸い寄せるため、陸地を1か所に集めて超大陸を形成する原動力にもなる。

浴槽に木の葉を浮かべて栓を抜いたとき、水に浮いた木の葉は水栓の上に吸い寄せられて集まる。地球では、比重の小さい大陸地殻がスーパーコールドプルームに吸い寄せられる。

現在、インド亜大陸はアジアと衝突しており、アフリカ大陸やオーストラリア大陸もアジアに接近している。太平洋によって隔てられているアメリカ大陸もアジアに向かって移動しており、約2億年後にはほとんどの大陸が合体した超大陸(アメイジア大陸)が形成されると考えられている。

将来的には、新たなコールドプルームがユーラシア西部にできる可能性がある。このコールドプルームによって、大西洋が再び縮小に転じ、アメリカ大陸がユーラシアやアフリカ大陸の西岸に接近・合体するというシナリオも考えられる。これをパンゲア・ウルティマ大陸説と呼ぶ。

ホットプルーム

ホットプルームとは、地球の内部で上昇するプルームの一種である。コールドプルームと逆に、深さ2,900kmの核との境目で核の熱を受けて高温になったマントル成分が上昇する。

現在、アフリカ大陸の下と南太平洋にスーパーホットプルームが存在している。アフリカ大陸のスーパーホットプルームは、大地溝帯(グレート・リフト・バレー)を形成した原因であり、南太平洋のスーパーホットプルームは、南太平洋に点在する火山の源であると考えられている。

ホットプルームは、外部マントルと内部マントルの境目の深さ670kmの部分に一旦滞留するため、通常では地上へ激甚な影響を与えない。しかし、大規模なスーパーホットプルームが直接地表に達すると、非常に激しい火山活動が発生する。

地球生命史上最も大きな大量絶滅が発生した2.5億年前のペルム紀/三畳紀境界(P-T境界)では、史上最大級の溶岩噴出事件によりシベリア台地玄武岩(洪水玄武岩)が形成された。これはスーパーホットプルームによるものである。

この時期は超大陸パンゲアが分裂を開始した時期であり、プルームの地表への到達と大陸分裂には相関性があると考えられている。

将来的には、次の超大陸ができたときに、直接地表に達する大規模なスーパーホットプルームが起こると考えられているが、これはまだ仮説である。

現在の考えでは、次の超大陸は、約2億年後に出現するアメイジア大陸と、約2億5千万 – 4億年後にかけて出現するパンゲア・ウルティマの2つの説がある。

アメイジア大陸説では、現在の太平洋で、パンゲア・ウルティマ大陸説では、現在の大西洋で、大規模なスーパーホットプルームが発生する可能性がある。

プレートテクトニクスで説明できないことを

プレートテクトニクスは、大陸プレートと海洋プレートの動きによって、地球表面で発生する造山運動・地震・火山などの現象を説明する学説である。

しかし、プレートがなぜ移動するのかについては説明されておらず、超大陸の形成や分裂を説明することはできなかった。

プルームテクトニクスは、地球内部のマントル対流によって、プレートが移動するという学説である。プルームテクトニクスによって、超大陸の形成や分裂、生物の大量絶滅などの現象を説明できるようになった。

生物の大量絶滅は、地球内部の動きに起因する大陸の離合集散や、大規模な火山活動による二酸化炭素濃度の上昇に端を発する気候変動によって引き起こされたと考えられている。

プルーム仮説として認知

「プルームテクトニクス」という語は、日本では丸山茂徳によって1992年に朝日新聞紙上で発表されて以来、認知されている。また、高等学校学習指導要領における地学基礎・地学の教科書にも取り上げられているため、高校生は学ぶ機会がある。

しかし、日本以外では、プルームテクトニクスという語はあまり使われていない。代わりに「プルーム仮説」と呼ばれることが多い。なお、マントルプルームという概念自体は、日本でも海外でも広く認知されている。

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