界面活性剤とは?その性質と種類、洗剤への効果を詳しく解説

洗剤の多くに含まれている界面活性剤。

一体どんな物質なのか、理解しないで使っている方がほとんどだろう。

界面活性剤は、化学的な特性により水と油などの互いに混ざりにくい物質の間で仲介役として働く物質だ。

その特異な性質により、洗剤や化粧品など多岐にわたる製品で使用されてきた。

この記事では、界面活性剤の基本的な性質と主な種類について解説し、洗剤の中での界面活性剤の役割や仕組みを詳しく紹介する。

洗浄力や乳化作用、泡立ちなどの洗剤に欠かせない特性についても明らかにしていく。

界面活性剤とは

界面活性剤は、水になじみやすい部分(親水基)と油になじみやすい部分(親油基・疎水基)を持つ物質の総称で、両親媒性分子とも呼ばれる。

界面活性剤は、ミセルやベシクル、ラメラ構造を形成し、極性物質と非極性物質を均一に混合させる働きがある。また、表面張力を弱める効果も持つ。

洗剤の主成分として使われるほか、食品や化粧品の乳化剤・保湿剤、農薬や兵器などにも重要な役割を果たしている。界面活性剤は微妙に化学構造を変化させるだけで異なる特性を示すため、多くの種類が生産・使用されている。

溶媒に界面活性剤を加えると、初めは疎水基が溶媒面に集まる状態となるが、界面活性剤の量を増やすと臨界量に達し、ミセルと呼ばれる構造を形成する。

ミセルは、界面活性剤が水溶液中で特定の濃度(臨界ミセル濃度、CMC)以上に存在すると、界面活性剤分子が親水基を外側に、親油基を内側に向けて形成する球状の構造のことである。

ミセルという言葉は、ラテン語の mica(粒子)に由来している。

このミセルの内部には、外部環境とは異なる物質を取り込める。界面活性剤の存在下では極性・非極性の両方の物質が均一に混合した溶液が得られる。

これを界面活性作用と呼ぶ。

CMCは界面活性剤の特性を示す重要な数値だ。これを境に溶媒の物性が大きく変化する。CMCが小さいほど界面活性剤としての性能が高くなる。

一定以上の濃度でさらに溶液を増やすと、ミセルの数は増えるが、ミセルの大きさは変わらず、ミセルが棒状または層状に構造を変え、溶液は白濁してゲル化する。

適正温度

界面活性剤には適正な温度範囲がある。イオン性界面活性剤は低温では結晶化してしまい、うまくほぐれない。

この温度をクラフト点という。

一方、非イオン性界面活性剤は高温では水に溶けきれず、溶液が白濁する。この温度を曇点(どんてん)という。

非イオン性界面活性剤はエーテル結合酸素と水分子の水素結合によって水溶性を示す。高温で水素結合が切れ、水溶性が下がるため溶液が白濁する。

乳化・可溶化

界面活性剤を加えると、水と油など互いに混ざり合わない物質でも、白濁して均一になる。こうしてできた液体をエマルジョンといい、この作用を乳化と呼ぶ。

エマルジョンは液/液コロイドの一種で、不安定な状態なので時間が経つと二層に分離する。

被分散液体が少量の場合、周りを囲むミセルは小さく、微視的には膨潤ミセルと呼ばれる。これにより透明な液体が得られるが、これをマイクロエマルションと言う。

マイクロエマルションは、乳化系のエマルションとは異なり、熱力学的に安定になっていて分離しない。

可溶化はミセル内に被分散体が取り込まれる現象のこと。ミセル形成が始まるCMCが高くなると可溶化能力が上がっていく。

なお、△溶媒に〇溶質を含んだ微粒子(ミセル)が分散している系のこと〇/△コロイドと表現している。ミセル中に固体を取り込み水中に分散しているものなら、固/水コロイドとなる。

分散・凝集

液/液コロイドでは乳化が起こり、固/液コロイドでは分散と呼ばれる現象が見られる。

界面活性剤を加えると固/液コロイドにおいても、ミセルが形成され、ミセル同士が互いに電気的に反発するため、固体粒子が水中に散らばる。

墨汁や口紅・インクなどはこの分散を利用して、非水溶性の物質を水に溶かす。また、洗剤が汚れをはがす作用は、乳化・分散によるものだ。

分散の反対は凝集である。分散した固体粒子を集めることを指す。微粒子の反発は主に電気二重層(主に負電荷)の反発によるものであり、陽イオン性のポリマーや硫酸アルミニウムなどの多価金属塩が使用される。

2価よりも3価のほうが凝集能力が高く、数十倍から数百倍高いことが一般的だ。凝集は上下水道の不純物の除去などで利用される。

起泡・消泡

気/液コロイドにおいて、界面活性剤の作用により泡が発生する現象を起泡という。

泡は気体を薄い液膜で包んだものであり、界面活性剤は親油基が気体側、親水基が液膜側に配列している。

通常、単一泡の集合体の泡沫では泡同士の三重接点により液膜が薄くなり、泡はじけて消えてしまう。しかし、イオン性の界面活性剤を使用すると、静電反発により液膜が一定の厚さを保とうとし、泡が持続するあわ立つ。

洗剤やアイスクリーム、消火剤などでこの起泡性が利用される。

消泡は起泡の逆であり、イオン性界面活性剤の静電反発を阻害することで泡を消す現象のことだ。非イオン性界面活性剤やエタノールなどの親水性有機溶媒を加えると消泡効果が得られる。

液体の温度を上げて泡の水分を蒸発させる方法もある。

ぬれ性

固体表面に液体が付着したものを「ぬれ」と呼ぶ。界面活性剤は、気/液界面や固/液界面において界面張力を低下させるため、ぬれ性を向上させる効果がある。

これにより、衣類に液体が染み込みやすくなったり、インクが染み込み、定着しやすくなったりする。この性質は保湿や浸透作用として化粧品、農薬、染物、洗剤などに応用されている。

柔軟・平滑作用

界面活性剤には柔軟作用と滑りをよくする作用がある。物質と物質の間の界面摩擦を小さくする。

繊維同士の摩擦を減らすことで柔らかく、肌触りがよい布地ができきる。また、リンスとして毛髪に作用し、サラサラの髪が得られる。さらに、圧延油や伸線加工油、プラスチックの滑剤にも利用されている。

帯電防止作用

界面活性剤には、水を吸収しやすい膜を形成したり、滑りを良くしたりすることで静電気の発生を抑える効果がある。

合成繊維やプラスチック製品は静電気を帯びやすく、埃や汚れが付着しやすい。そこで、界面活性剤を表面に塗布したり、練り込んだりして防ぐことができる。火花などによる事故を防ぐ目的で使用されることもある。

界面活性剤の性質を利用した主要製品

洗剤・シャンプー

洗濯用洗剤は、界面張力を低下させて水溶液を布地に染み込ませ、汚れを分散させる。最後に流水で流すことで汚れを洗い流す。台所用洗剤は油を乳化させて流水中に押し流す。シャンプーも同様に、アニオン性のものを使用して髪の汚れを落とす。

化粧品

化粧クリームは水・油分・乳化剤を主成分とするエマルションだ。乳化剤は成分を均一に混合し、流動性を与える。

クリームが固体で塗るときに滑らかに広がるのは、圧力をかけると分散状態の粒子間の相互作用が断ち切られるためだ。

また、肌に直接触れる化粧品は、皮膚への刺激性が低く、毒性がなく、色や匂いがなく、化学変化しにくい界面活性剤が求められる。

ということで、非イオン性のアルキルポリオキシエチレンエーテルや脂肪酸グリセロールエステルが使用されている。

表面処理剤

界面活性剤は水に溶けにくい有機化合物とイオン性物質の仲立ちをし、表面改質に利用される。

気/液界面では、ガラスの表面や衣類に塗布して様々な性質を付与できる。撥水剤や防曇・展着剤、潤滑剤、帯電防止剤、媒染剤、防錆剤、金属圧延油など、幅広い用途がある。

撥水剤は、フッ素系やシリコン系の界面活性剤をガラスや繊維に塗布し、水をはじく性質を持たせる。展着剤は農薬に使われ、ぬれ性を向上させ薬剤を植物に定着させる。

ヘアーリンスや柔軟剤には潤滑剤として界面活性剤が使われる。錆を防ぐためには水分を避け、表面に疎水性の皮膜を作る防錆剤もある。また、生体になじみやすいように表面改質されている生体適合性材料もある。

分類

界面活性剤は、親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)か、非イオン性(ノニオン性)かで分けられる。低分子系と高分子系に分類されることもある。

イオン性
 カチオン性
 アニオン性
 双性

非イオン性
 ノニオン性

陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)

陰イオン界面活性剤は、陰イオン性の親水基を持つ界面活性剤のこと。

水に溶けた場合に陰イオンに電離し、界面活性作用を示す。

合成洗剤などの洗浄剤やシャンプーなどの製品に使用され、洗浄力や起泡力を向上させる役割を果たしている。

石けんやアルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS洗剤)などが代表的だ。

石鹸(脂肪酸ナトリウム) RCOO-Na+
モノアルキル硫酸塩 ROSO3-M+
アルキルポリオキシエチレン硫酸塩 RO(CH2CH2O)mSO3-M+
アルキルベンゼンスルホン酸塩 RR’CH2CHC6H4SO3-M+
モノアルキルリン酸塩 ROPO(OH)O-M+

陽イオン界面活性剤(カチオン界面活性剤)

陽イオン界面活性剤とは、陽イオン性の親水基を持つ界面活性剤の総称。水に溶解したときにイオンになって電離し、反対側の親水基の部分がプラスイオンを有する(陽性に帯電する)界面活性剤のことを指す。

陽イオン界面活性剤は、第4級アンモニウム塩を親水基とするものがあり、金属イオンの影響を受けにくく、水溶性が高い特徴がある。陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤と並んで、界面活性剤の一種です。逆性石鹸、リンス、柔軟剤などに利用される。

アルキルトリメチルアンモニウム塩 RN+(CH3)3X-
ジアルキルジメチルアンモニウム塩 RR’N+(CH3)2X-
アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩 RN+(CH2Ph)(CH3)2X-

両性界面活性剤(双性界面活性剤)

両性界面活性剤とは、陽イオン界面活性剤や陰イオン界面活性剤と異なり、pHによってプラスイオンに帯電する陽イオン性の親水基と、マイナスイオンに帯電する陰イオン性の疎水基を持つ界面活性剤のこと。

両性界面活性剤は、洗剤やシャンプーなどの洗浄力増強剤や、あわ立て剤として使用される。また、陽イオン界面活性剤や陰イオン界面活性剤と比べて、肌や髪に刺激が少ないとされ、低刺激性の製品に使用されたりする。

アルキルジメチルアミンオキシド R(CH3)2NO
アルキルカルボキシベタイン R(CH3)2N+CH2COO-

非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)

非イオン界面活性剤とは、水に溶けてもイオン性を示さないが、界面活性を呈する界面活性剤のことだ。親水部がイオン化しない非電解質になっている。

一般的に、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤と比較して、低濃度における界面活性に優れているとされる。

非イオン界面活性剤は、洗剤やシャンプーなどの製品に使用されることがある。また、肌や髪に刺激が少ないとされ、低刺激性の製品に使用されることがある。

ポリオキシエチレンアルキルエーテル RO(CH2CH2O)mH
脂肪酸ソルビタンエステル
アルキルポリグルコシド
脂肪酸ジエタノールアミド RCON(CH2CH2OH)2
アルキルモノグリセリルエーテル ROCH2CH(OH)CH2OH

この界面活性剤は洗剤の成分として当たり前のように配合されてきたが、別にこの成分をおすすめしているわけではない。どんな理由で使用されているのを理解できればいいだろう。

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