地震予知が成功しない理由と現実に行った例

現在の科学と技術の水準では、地震の予知を確実に行うことは非常に難しい、または、ほぼ不可能だ。

地震予知が成功しない理由

なぜ、地震予知が成功できないのか、それには理由がある。

まず、地震の発生メカニズムが複雑である、という点だ。

地震は大地の地殻プレートが移動する際に生じる現象であり、その発生メカニズムは非常に複雑だ。地震がいつ、どこで、どの程度の規模で発生するかを正確に予測することは難しい。

前兆を捉えるためには十分な密度と頻度で観測が必要になる。
日本でも、測定器を設置して長期間の観測を行っても、大地震の前兆が記録される機会は少ない。それを処理するために多くの予算と専門家が必要になる。

前兆の現れ方は地震ごとに異なり、規則性が乏しい。また、予知の前兆が不確実なものであることも、地震予知は不可能であるとの理由である。大地震の震源域近くで観測が行われていても異常が検出されないことがある。

地殻変動、動物の異常行動、地下水位の変動などが地震の前兆とされるが、地域によって異なり、確実な予知を行うためには信頼性の高い前兆を特定する必要がある。これらの前兆の解釈が難しい場合が多い。

前兆とされた事例の多くは、事後調査で判明している。前兆を事前に確認しているはずなのに、それがその時に前兆であると解釈できない。

これらの理由によって、未だに地震予知は成功できないでいるのだ。

予知の試行事例

難しいとされる地震予知だが、現実に行った例もある。

パークフィールドでは失敗

地震予知の試みの一例として、アメリカカリフォルニア州にあるパークフィールドという小さな町が挙げられる。

この町では、約22年ごとに、M6級の地震が発生するという規則的なパターンが19世紀から知られていた。

1980年代になり、次の地震が1988年から1992年の間に起こると予測された。

この予測に基づいて、アメリカ地質調査所(USGS)、カリフォルニア州地質調査所(CGS)、大学などが中心となり、1985年から”Parkfield Prediction Experiment”(パークフィールド予知実験)と呼ばれる高密度な観測が行われ、地震予知を試みた。

しかし、1992年と1993年に米国地震予測評価評議会(NEPEC)が最高のAクラスの警報を発表した。実際の地震は10年以上経過した後の2004年に発生し、しかもその際には警報が出されず予知に失敗した。

地震予知に成功した中国の海城地震

世界では、「地震予知に成功した」とされる例もいくつか報告されているが、それには批判がついたり、一般的な理論に合致していなかったりする。

1975年に中国の海城地震では、地震前に行政が警報を発し、多くの住民を避難させたことで死傷者が少なかったと報告されている。

ただし、この事例は珍しい前震を基にした特殊なケースであり、すべての地震に当てはまるわけではないと考えられています。

1976年の唐山地震

実際、1976年の唐山地震では前兆があったにもかかわらず、決定的な情報がなく警報を発表できず、結果的に20万人以上が死亡した。

ギリシャのVAN法

また、ギリシャではVAN法と呼ばれる地震予知方法が1990年代に注目された。

VAN法とは、ギリシャのアテネ大学の物理学者ヴァロツォス、アレクソプロス、ノミコスによって提案された地球電磁気学を用いた地震予知法のこと。「VAN」は3名の頭文字をとったものである。

この方法で、1995年に発生したM6級の地震など多くの成功例が報告された。しかし、成功判定の基準が甘いという批判が浮上し、政府は予知を認めなかった。

その後もVAN法は続けられているが、ギリシャでは地震被害が頻繁に発生し、予知が成功したといえる基準や、報道の手段が問題とされている。

そもも地震予知は無理

日本地震学会は、「何月何日の何時に、何処でどれだけの規模の地震が発生する」という、従来の「短期予知」や「直前予知」といった地震予知は、「現時点では非常に難しい」との見解を示している。

国際地震学及び地球内部物理学協会(IASPEI)の部会である「市民保護のための国際地震予測に関する検討委員会(CCEP)」の2009年の報告書でも、同様の見解が述べられている。

宏観異常現象(こうかんいじょうげんしょう)

宏観異常現象と呼ばれる、動物や植物などの前兆現象を用いた研究も行われているが、科学的な説明が不十分である。

気象庁や日本地震学会などの公的機関は、これらの前兆を実用的な地震予知に利用するのは難しい、と説明している。

宏観異常現象の一つである地震雲は、研究報告は存在するが、そのメカニズムについては説明が不足している。経験的・統計的な観点からも客観的評価が難しいとされている。

地震予知には、その他にも問題はある。

地震予知が実現した場合、情報をどう公表するのか、や、失敗した場合には、誰がどのように責任を取るのか、という問題だ。

現在の地震予知技術は限定的であり、短期的な正確な予知は難しい。一方、数十年以上の単位で行う確率論的予測は、地震危険度として実用化されている。これは地震の長期的リスクを示すものであり、警報の性質はない。

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