台風とは何なのか?その特徴と一般的知識を解説

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台風は、自然界における激しい気象現象の一つだ。強力な風と集中豪雨を伴い、時には大きな被害をもたらす。

その特徴的な円形の雲模様や、中心部の穏やかな「台風の目」が有名だ。

台風は、温暖な海水からの水蒸気を利用してエネルギーを得て発達し、その勢力は大小様々。その形成から進路、影響まで、台風の特徴や挙動について理解することは、災害対策や予防に不可欠。天気予報を見るときにも役立つ。

本記事では台風に関する知識を一通り探求していく。

目次

台風とは

台風とは、北西太平洋や南シナ海に存在し、かつその内部の最大風速が約17.2 m/s(34ノットまたは風力8)以上に達する熱帯低気圧のことを指す。

台風は、強風域や暴風域を伴い、しばしば激しい雨や風をもたらすことが多く、気象災害を引き起こす。

地球を上空から見ると、台風は反時計回りの積乱雲の渦から構成される。風速15m/sの強風域が半径800km以上に達する巨大な台風は「超大型台風」と呼ばれる。

台風を定義する

気圧が最も低い位置が「気圧中心」と呼ばれる。その位置と勢力で台風と定義される。前線を伴わないことが、台風と温帯低気圧との最も大きな違いである。

台風の位置

北西太平洋において、「東経100度線から180度経線までの北半球」に中心を持つものが、台風の定義だ。

北太平洋西部(北西太平洋)や、南シナ海、東シナ海、フィリピン海、日本海などに広がり、陸域としては東アジア、東南アジア、ミクロネシアの一部を含む。

最大風速が17 m/sを上回る熱帯低気圧は、北インド洋では「サイクロン」と呼ばれる。

南太平洋、北太平洋(180度経線以東)、北大西洋の熱帯低気圧で、最大風速が33 m/sを上回るものは「ハリケーン」とされる。

台風、サイクロン、ハリケーンは現象としては同じである。

台風の呼び名

これらの熱帯低気圧が地理的な境界線を越えると呼び名が変わる。たとえば、2006年に北東太平洋で生まれたハリケーン・イオケは、進路を西に取って経度180度を越え、台風12号となった。このように、地域をまたぐ台風は「越境台風」と呼ばれる。

逆に、越境した台風が台風ではなくなることもある。2019年の台風1号は、マレー半島近くで東経100度線を越え、サイクロンに変わった。

世界気象機関の国際分類では、地理的な領域に関係なく、熱帯低気圧を最大風速に基づいて、4つに分類している。

最大風速 (m/s)国際分類日本の分類
32.7以上タイフーン強い台風
24.6 – 32.6シビア・トロピカル・ストーム
17.2 – 24.5トロピカル・ストーム
17.2以下トロピカル・デプレッション熱帯低気圧
国際分類と日本の分類の比較

この場合の「タイフーン」と、ここで述べた「台風」は英語で同じ”typhoon”と呼ばれるが、異なる概念である。

台風の勢力と観測方法

台風は、熱帯低気圧域内で、最大風速17 m/s以上を満たしたものを指す。

台風の位置、中心気圧、最大風速、大きさの数値は、実測値ではない。

ドボラック法に基づいて人工衛星画像からまず推定し、地上や船舶で風速が観測できた場合、その度に修正していく方法を採っているためである。

ドボラック法は、気象衛星が可視光・赤外線で撮影した画像から、中心気圧や最大風速、台風の半径など熱帯低気圧の勢力を推測する方法だ。

例えば、洋上にある台風中心の風速を実測するには航空機が必要となり、実際に1987年(昭和62年)までは米軍が航空機観測を実施していた時期もある。観測員や設備・運用等の負担が大きく、現在日本では航空機による観測は恒常的な手段ではない。

台風 構造 階級

台風の中心位置、最大風速、中心気圧、暴風域半径、強風域半径などを総称して台風諸元という。

台風 構造 温帯低気圧 違い

亜熱帯や熱帯で海から供給される大量の水蒸気が上昇して空気が渦を巻き、できるのが熱帯低気圧で、これが最大風速17.2m/sを超えると台風となる。

冷たい空気と暖かい空気が混ざりあおうとして空気が渦を巻いてできるのが温帯低気圧であり、台風と構造が異なる。

温帯低気圧は、冷たい空気と暖かい空気がぶつかりあっており前線を伴うが、台風は暖かい空気のみでできているため前線を伴うことがない。

台風が北上して、冷たい空気が流入したときには温帯低気圧に変化する。

温帯低気圧とは

温帯低気圧とは、軽い暖気が上昇し、重い寒気が下降する際に解放される位置エネルギーによって成長する低気圧を指す。

赤道からの暖気と、両極からの寒気が温帯気候地域で交わる。このタイプの低気圧は主に温帯地域で生じるため「温帯」の名前がある。

赤道地域からの過剰な熱供給が、北極南極地域の過剰な熱放散を相殺している形だ。

北半球では、温帯低気圧は、その中心の南東側に温暖前線を、南西側に寒冷前線を伴う。

成熟した低気圧は、寒冷前線と温暖前線が中心周辺で結合し、中心またはその近くから閉塞前線を引き連れた後、温暖前線と寒冷前線の2つに分かれる場合もある。

温暖前線では暖気が寒気の上に押し上げられ、寒冷前線では寒気が暖気の下に潜り込んで暖気を持ち上げることで上昇気流が発生する。

この上昇気流から雲が形成され、低気圧中心周辺だけでなく、前線の周りでも天気が悪くなる。

台風の目の特徴

「台風の目」は、中央に広がる丸い空洞のような領域だ。

台風の中心部周辺では、風の方向が乱れているため、強風が互いに相殺される状態になる。台風の中心部で下降気流となり、風や雲が少ない領域が「台風の目」と呼ばれる。

台風の勢力が大きいほど、目がはっきりと現れ、勢力が減ると台風の目ははっきりしなくなる。

発達した台風には、「アイウォール」と呼ばれる、高い積乱雲が中心部を包み込んでいる領域がある。

この領域では、台風の目の周囲に、強風が中心に向かって吹き込み、上昇気流ができ、積乱雲が壁のように取り巻くようになる。

この壁の高さは、地上1000mから10000mに及ぶ。その外側には外側降雨帯が広がっている。台風から数百km離れた場所には、先駆降雨帯が形成されることがある。

この位置に前線が停滞していると、前線の活動が活発になり、大雨となることもある。

危険半円と可航半円

台風では、中心から前方に進む方向(南東側)が風雨が強くなることが一般的だ。

これは、台風に入る風が、台風本体を押し流す気流と同じ方向を向いているため、風がさらに強まるからだ。

気象学では、この台風の進行方向の右側半分を「危険半円」と呼んでいる。

一方、台風の左側半分では、吹き込む風と気流の方向が逆になるために風が比較的弱い。これを「可航半円」と称する。

この「可航半円」という概念は、台風の中心から遠ざかる際、台風の進行方向の左側に入っていれば、右側船尾に追い風を得ながら避難できた、という昔の航海事情に由来し、単にそう呼ばれているだけだ。

右側半分と比較して風雨が弱いというだけで、可航半円の領域であっても風雨は依然強い。

台風の階級

台風の勢力を明瞭に示すために、台風は「勢力」と「大きさ」で階級に分られている。

勢力による分類は、世界気象機関(WMO)によって規定された方法が使われている。また、それに類似した異なる分類法も、熱帯低気圧のクラス分けなどで用いられている。同じ台風でも、気象機関によって異なる段階に分類されることがある。

具体的には、米軍の合同台風警報センター (JTWC) では1分間平均の最大風速を、一方、日本の気象庁では10分間平均の最大風速を基に分類している。

同じ時刻の観測でも、米軍の合同台風警報センターが台風を強力と判断する一方、日本ではその強さに達しない場合もある。1分間平均風速は、10分間平均風速よりも、1.2 〜1.3倍大きくなる傾向があるために、このような差異が生まれる。

最近では、強さの分類に最大風速を用いているが、かつては中心気圧が用いられていた。その名残りで、日本の台風情報には中心気圧も記載されている。

大きさによる分類

日本の気象庁は、台風の大きさで分類を行なっている。風速が15m/sを超える強風域の大きさで、台風が分類される。15m/sを超える強風域が左右非対称な状態なら、その平均値を求める。

風速15 m/s以上の半径大きさの階級
800 km以上超大型の台風
500 – 800 km大型の台風
300 – 500 km中型 (並みの大きさ) の台風 (旧基準)
200 – 300 km小型の (小さい) 台風 (旧基準)
200 km以下ごく小さい台風 (旧基準)
台風の大きさによる分類

新基準では超大型・大型のみでそれ未満は階級なし

スーパー台風

メディアなどで「スーパー台風」と呼ばれることがあるが、気象庁は「スーパー台風」を定義していない。

「スーパー台風」は、米国の合同台風警報センターは、最大強度が130ノット(約67m/s・240 km/h)を超える台風、中華人民共和国では、風速が100ノット (約52m/s・185 km/h) を上回る台風としている。

最大風速 (1分間平均)階級
130 knot (240 km/h) 以上スーパー台風
63 – 129 knot (118 – 239 km/h)台風
34 – 62 knot (63 – 117 km/h)熱帯性暴風雨
22 – 33 knot (41 – 62 km/h)熱帯低気圧
JTWCの分類
風速階級
100 knot (185 km/h) 以上スーパー台風
81 – 99 knot (150 – 184 km/h)強い台風
64 – 80 knot (118 – 149 km/h)台風
48 – 63 knot (88 – 117 km/h)激しい熱帯性暴風雨
34 – 47 knot (63 – 87 km/h)熱帯性暴風雨
22 – 33 knot (41 – 62 km/h)熱帯低気圧
香港天文台・マカオ地球物理気象局の分類

台風の一生 発生から消滅まで

ほとんどの台風は、北半球では夏から秋にかけて発生する。

台風最盛期の経路をみると、発生した場所から貿易風により西に向かって北上し、太平洋高気圧の端をたどりながら進んでいく。

その後、進路を変えて偏西風の影響で東寄りに進み、ジェット気流が強まる地域に差し掛かると、速度を上げて東進する。

中心部上昇気流の力が低下する原因として、海水温・気温の下降がある。さらに、海上よりも地上の地形が複雑で、昼夜の温度差が大きい陸地に上陸することで勢力が弱まる。

しかし、このようなわかりやすい定型的な進路を辿る台風は、実際には多くはない。

太平洋高気圧の影響で西に進み続けたり、動かずに停滞したり、複雑な経路をたどるものもある。

これらの台風は、日本列島やフィリピン諸島、台湾、中国の華南・華中沿海部、朝鮮半島などに大きな被害をもたらすことがある。ベトナムやマレーシア、マリアナ諸島、ミクロネシアなどを通ることもある。

海水温の高い低緯度では、稀に冬季に台風が発生することもある。

台風の進路の北限はジェット気流によって影響され、その流れが変わるにつれて、コースも北へと移動し、夏が過ぎると再び南下してくる。

台風の発生から発達、消滅までの流れを以下でみていく。

台風の発生

台風やハリケーン、サイクロンなどの熱帯低気圧の生成メカニズムについて、いくつかの説が提唱されてきた。

熱帯地域の強い日射によって海面から上昇気流が生じるという説、
熱帯収束帯(赤道前線)上での発生説などが提案されたが、十分なものではなかった。

現在では、「偏東風波動説」が幅広い支持を受けている。

南北両半球の北緯(南緯)30度付近では、赤道から上昇して北上(南下)した空気塊(潜熱を含む空気)が、ハドレー循環によって上空にとどまってから下降し、その後に「亜熱帯高圧帯」が形成される。
北太平洋高気圧もこれに該当するが、これらの高気圧から赤道方向に向かう風はコリオリの影響で恒常的な東風となる。
これが偏東風であり、この風の流れに波動が生じると、反時計回りの渦度が発生し、水蒸気が凝結する際に放出される潜熱がエネルギー源となって熱帯低気圧が形成されるという考えだ。

波動がなぜ生じるかはまだ明確ではないが、実際の観測とよく一致する説である。

ただし、こうして生じた波動の多くは成長せずに消失する。1万メートル以上の高層に高気圧がある場合、高気圧の循環による上昇気流の強化により台風が発達すると考えられている。

台風が発生するには、海面の水温が26〜27 ℃以上である必要があり、高温の海面から蒸発する水蒸気がエネルギー源となっている。

コリオリの力による説明

台風の発生には「コリオリの力」の影響が欠かせない。

コリオリの力が小さな緯度5度までの赤道付近では、著しい熱帯低気圧は生じない。

コリオリの力とは、慣性系に対して回転する座標系内を運動する物体に作用する力のこと。時計回りに回転する座標系では、この力は物体の進行方向の左側に働き、反時計回りでは力は右に働く。

地球は自転しているため、地球にいる観測者は、物体の運動を正しく分析するためにはコリオリ力を考慮する必要がある。

大気中の空気や海洋中の水の大規模な運動など、長距離砲やミサイルの軌道のように、スケールが大きい運動の場合にコリオリ力の影響は顕著になる。

このような運動はおよそ地球の表面にに制約されるため、一般には水平成分のみが重要となる。

コリオリの力は、地表を移動する物体を、北半球では進行方向に対して右に、南半球では左に偏向させる。

風や海流は、単純に高気圧から低気圧へと直接流れるのではなく、赤道より北ではこの方向より右に(反時計回り)、赤道より南ではこの方向より左に(時計回り)流れる傾向がある。

この効果によって回転が起こり、台風が形成されると説明される。

台風が北半球で反時計回りの渦を巻くのは、風が中心に向かって進む際に、コリオリの力を受けるためであるとされている。

台風が発達する過程

台風の発達過程は詳細に解明されている。

台風の原動力は、凝結によって発生する熱だ。

温暖な空気と、寒冷な空気が接触するなどして、有効位置エネルギーが変換されて運動エネルギーが生成され、これが発達の源となる。この点で温帯低気圧と大きく異なる。

上昇気流が空気中の水蒸気を凝結させ、熱(潜熱)が放出される。この軽くなった空気が上昇する。

その結果、地上近くでは周囲から湿った空気が中心に向かって上昇し、更に熱を放出してエネルギーを供給する。この条件が揃うと、台風が発達する。

このような対流雲の発達のメカニズムを「シスク(CISK、Conditional Instability of the Second Kind)」と呼ぶ。

藤原の効果

1,000 km以内に2つの台風が存在する場合、互いに影響し合い、複雑な経路をたどることがある。この現象は、第五代中央気象台長である藤原咲平に因んで「藤原の効果」と呼ばれている。

台風の動きは「相寄り型」「指向型」「追従型」「時間待ち型」「同行型」「離反型」の6つに分類されている。

相寄り型
片方の熱帯低気圧が近づくにつれて急速に勢力を弱め、もう一方の熱帯低気圧に取り込まれる

指向型
片方の熱帯低気圧のみが影響を受け、もう片方の熱帯低気圧の周りを運動する

追従型
最初に一方の熱帯低気圧が進路をとり、その後ろにもう一方の熱帯低気圧が追いかけるように動く

時間待ち型
東側の熱帯低気圧が先に北上し、その後に西側の熱帯低気圧が移動を開始する

同行型
2つの熱帯低気圧が平行して進行する

離反型
東側の熱帯低気圧が急速に北東へ進み、一方で西側の熱帯低気圧が徐々に減速しながら西に向かう

台風の勢力と収束

一般的に、台風は日本の南海上で発達するが、日本列島に接近・上陸すると勢力が減少する傾向がある。

これは、南海上では海水温が高く、台風の発達に必要な要素が揃うが、日本列島に近づくと、海水温が26℃未満になるため、台風の発達は収束の傾向を示すためである。

温帯低気圧化が進む台風

初夏および晩夏~秋には、日本列島に接近する多くの台風は、高緯度から寒気を引き込み、次第に温帯低気圧の構造に変化し、前線が形成されることがある。

温帯低気圧化が進む台風は、南北の温度差によって運動エネルギーを得るため、海水温が25℃以下の海域でも衰えず進むことがある。

更に高緯度へ進むと、前線が中心部にまで達し、温帯低気圧化が完成する。
また、台風内の暖気核が消失することで温帯低気圧化する場合がある。この場合は必ずしも低気圧の中心に前線が形成されるわけではない。

日本列島に上陸せず、対馬海峡を通過して日本海南部に入る場合、台風が一度は上陸し勢力が弱まった後、日本海南部へ進む場合、被害を受けにくい北海道や東北地方に甚大な被害をもたらすこともある。

対馬海流が台風に暖気を供給し、勢力を盛り返すためだ。

洞爺丸台風(1954年)、平成3年台風第19号(りんご台風、1991年)、平成16年台風第18号(2004年)などがその例である。

台風の消滅

台風が海面水温の低い海域に到達すると、水蒸気の供給が減少したり、地表と摩擦することによって、台風のエネルギーが失われ、その結果、熱帯低気圧や温帯低気圧へと変化することとなる。

台風が北上し、北方の冷たい空気を巻き込み始めると、その構造は温帯低気圧へ変わっていく。

台風から温帯低気圧への変化は、低気圧の構造の変化という意味であり、雨量や風速が減少する、という意味ではない。

例えば、2004年の台風18号では、温帯低気圧へ変化した後も中心気圧968hPa、最大風速30m/sの勢力を保ち、この低気圧が北海道札幌市では最大瞬間風速50.2m/sを記録した。

まとめ

台風の特徴を理解することは、災害リスクの軽減したり、適切な対策を実施したりするのに欠かせない。

その巨大なスケールやエネルギー、不可抗力との直面から生じる影響は計り知れず、影響を受けるのはテレビ内の専門家ではなく、我々である。

科学の進歩によって台風予測の精度は向上してはいる。だが、本記事で書かれた知識や定説まで含め、「現段階でこういう説明が主流」となっているというだけで、完全なものではないので注意が必要だ。

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