地震予知の定義 決定論的予知と確率論的予測

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地震予知は、人類が古代から現代に至るまで悩まされてきた謎の一つだ。

地震予知について考える際、我々はしばしば「決定論的予知」と「確率論的予測」という二つのアプローチがある。

この記事では、地震予知の定義から始め、決定論的予知と確率論的予測の違いについて探求する。

目次

地震予知とは

地震予知は、科学的な手法を使用して地震の発生時期、場所、および規模を論理的に予測する試みである。具体的には、地震がいつ、どこで、どのくらいの大きさで発生するかを予測する。

この予測は、主に短期的な事前避難や危険防止行動に関連し、これを「決定論的予測」と呼ぶ。しかし、長期的な地震の危険度については含まれていない。

具体的な日付や、時間を指定するような短期的な決定論的な地震予知は、現在の科学的な知識では実現できない。地震は突然発生するものであり、常に備えておくことが重要である。

従来の地震予知の定義

従来、地震予知は、地震の発生時期、場所、および規模を事前に予測することを指していた。つまり、地震が起こる前にこれらの要素を予測することが目的であった。

しかし、地震予知の研究が進むにつれて、長期的な発生確率なども「地震予知」という言葉で包括的に扱われるようになる。長期的な発生確率は、緊急性が低く、情報の利用方法が異なるため、「地震予知」という一つのカテゴリーで語ることが困難となった。

そのため、予測期間に基づいて区別することが行われるようになった。

短期予知 直前予知

具体的には、予知の情報を得た後、短い期間(通常は地震の数か月前以内)で日時を指定するものを「短期予知」と呼ぶ。これは応急的な被害回避に役立つ。

さらに、短期予知の中で地震発生の2-3日前程度以内に予測を行うものを「直前予知」として区別することもある。

長期予測

一方、長期的で建築物の耐震化などに関連する予測は「長期予測」または「長期予知」と呼ばれ、日本国政府の地震調査研究推進本部などが「30年以内にN%の確率で地震が起こる」といった形で示す。

さまざまな基準から、「長期予知」「中期予知」「短期予知」の3区分や、「長期予知」「中期予知」「直前予知」の3区分なども存在した。また、「地震予測」と「地震予知」の用語が混在し、研究者や専門家の間で一貫性が欠けることもあった。

要するに、地震に関する用語や区分には統一性がなく、混乱が生じていたのである。

地震予知の新しい定義

2009年4月、イタリア・ラクイラ地震における地震予知情報に関連した騒動が発生し、その結果、2009年に国際地震学及び地球内部物理学協会(IASPEI)の部会である「市民保護のための国際地震予測に関する検討委員会(CCEP)」が設立された。

この検討委員会によって、従来の「地震予知」が2つの異なるカテゴリーに分けられることが明確に示された。

これら2つの区分は、高い確度で警報につながるものとする「決定論的予知」と、確率に基づいて日常的に公表可能なものとする「確率論的予測」である。

日本地震学会はこの提案を受けて、従来の定義である「時期・場所・規模の3要素を満たす予測」が決定論的予知に該当し、確率論的予測には当てはまらないという見解を発表した。ただし、この見解は報告書内でのみ言及され、広く知られることはなかった。

しかし、2011年の東北地方太平洋沖地震に対する予知ができなかったことから、2012年秋に日本地震学会は用語を正式に見直した。決定論的予知は「地震予知」とされ、決定論的予知と確率論的予測の総称が「地震予測」と定義された。

これにより、確度の高い決定論的予知だけが厳密な意味での「地震予知」と見なされ、従来の「地震予知」に含まれていた長期的な予測は「地震予測」として独立させられた。

CCEPの提案では、「決定論的予知」は理論的に不可能ではないものの、実現が難しい。一方で、「確率論的予測」は地震のリスクを定量化するために社会に役立つ、との見解が示された。日本地震学会の見直しは、地震予知の定義をより具体的にし、実用的な長期予測との違いを明確にすることで、市民の誤解を減少させる狙いがあった。

また、地震が発生した後に情報を提供する地震警報システム(緊急地震速報)は、地震予測・予知には含まれない。

予知情報の3つの要素

地震予知を検討する際には、予知情報の3つの要素が適切であることが重要である。発生時期発生場所規模のいずれか一つでも不明瞭である場合、予知情報は有用でなくなる可能性がある。

例えば、「どこかで地震が起きる」「1年以内に地震が起きる」といった広範囲で長期間の予測は実際の対策が難しい。

また、「明日、東京で地震が起きる」「東京に大地震が起きる」といったように3つの要素のうち一つでも不足すると、予測の範囲が無限に広がってしまう可能性がある。

また、規模が明確であっても、被害を引き起こさない小規模な地震に関する予知は意味がない。

さらに、ネットや雑誌などに満ちている「地震予知」情報に対しては、以下の点に留意する必要がある。

  • 予知に関するデータの観測期間が十分であるかどうかを確認する。
  • 予知の根拠となる地震と異常現象の関連性を説明する仮説が存在し、それが一般的な科学法則に従っているかどうかを確認する。
  • 仮説およびそれに基づく予知が第三者によって検証可能であるかどうかを確認する。
  • 基本的な情報として問合せ先が明示されているかどうかを確認する。

これらの要点を考慮し、客観的な検討を行うことが推奨されている。

決定論的地震予知の特殊性

確率論的な地震予測と、決定論的な地震予知は、どちらも基本的に地震が発生する確率を評価することを意味する。

ただし、決定論的な地震予知は、通常の地球物理学的な問題とは異なる。

決定論的な地震予知は、不完全な情報のもとで多くの不確定要素が存在し、時間制約がある状況で行われる。そのため、科学的な判断だけでは不十分であり、住民の反応や社会への影響を考慮した政治的・行政的な判断が必要である。

リンド(A.G.Lindh,1991)はこれを説明し、決定論的な地震予知は「通常の科学的な判断よりも医者や将軍の判断に似ている」と述べている。

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